『一瞬小説・超短編小説』なみのり 創作総合

140文字程度の一瞬小説をメインに、短い小説を作ります。 2019/08/17から、本格的に活動しています。

カテゴリー:すぐ読めて癒されるような超短編小説集

超短編小説 No10 『シュークリームと象』

□1私の誕生日の日に突然、蜃気楼みたいな空気をまといながらどこからか象が現れた。 □2その象は(多分)招かれてもいないのにパーティーテーブルの前まで来て、おもむろにシュークリームに鼻を伸ばす。リンゴを食べるみたいな手付きで、フワフワトロトロなシ…

超短編小説 No9 『星屑と列車』

□1私は流星群を見に来ていた。星の輝く群青の空は、地上を淡く照らしている。まるで海の中ににいるみたいな気分だ。私達の街は水没してしまったのだ。 □2私がそんな妄想をしていると、誰かがあっと声を上げる。流星群が始まったのだろう。私も空を見上げる。…

超短編小説 No8 『夜の街のソーダ水』

□1街灯に照らされた静かな街並み。藍色の空と、濃紺の空気。藍色の街。ここは水没夜の街。そこにはとある魔法使いが暮らしている。彼女はまだ若いけど、それなりの苦労をしてきたもののような、老獪な雰囲気をユラユラと周りに漂わせる。それでいながら目は…

超短編小説 No7 『読書灯』

□1月もない真っ暗な夜中。私は暗い部屋でベッドにうつ伏せ、一人読書灯を見ていた。魚の形のオレンジに光る読書灯だ。私は本も開かずにただ、読書灯を見ていた。 □2オレンジの灯りが私の体に張り付いて、後ろに大きな黒い影を作る。影は私の真後ろで大きな怪…

超短編小説 No6 『サイコロ振ってみた』

□1今度のパーティーで皆にマジックを披露したいと思って、こっそり練習しようと計画していたら、自然と足が雑貨屋さんに向いていた。 □2雑貨屋さんはまるで宝箱やクラッカーのようで、楽しいものやワクワクするものが詰まっていた。宝石みたいなボタンに、見…

超短編小説 No5 『毛糸川』

□1水色と白色の毛糸玉を買ってきた。漠然となにか作りたくなったのだ。でも買ったきりなかなかやる気が出なくて、机の上に転がしていたら、ポンポンと床に落としてしまった。急いで拾おうとしたけど、毛糸玉はどんどん遠くに行ってしまう。私が椅子の上でそ…

超短編小説 No4 『ビー玉と雷鳴』

□1 私は部屋でビー玉で遊んでいた。ビー玉は複雑な模様と光を放ちながらコロコロと転がる。見ているだけでも楽しいけれど、一番は転がしたり他のビー玉とぶつけたりして、音や色を楽しむことだ。と、その時。ビー玉の内の一つがコーンと跳ねっ帰ってそのまま…

超短編小説 No3 『宝石パイ屋さん』

□1 ここは宝石パイ屋さん。キラキラ輝く宝石が埋め込まれたパイを売るお店だ。 □2 私がパイ屋さんに入ると、店の奥からなにやらくぐもった声が聞こえる。 このお店は人間用じゃないので、店主さんも人間には聞こえない声を出すのだ。 私はちょっとだけお辞儀…

超短編小説 No2 『風ネズミと夢図鑑』

□1 私は今、薄暗い屋根裏部屋でとある灰色のネズミを見つけてしまった。 このネズミは名前を「風ネズミ」と言う。大きな風と一緒に飛んでいく不思議なネズミだ。 本の挿絵によるともっと綺麗な色とのことだったが、こういう変わり種もいるのだろう。私はこの…

超短編小説 No1 『ベッド上の上演』

□1 私はベッドに潜り込む。フワフワな毛布が私を包み込む。窓にはカーテンが閉められて、月明かりも街灯も、隣の家の仲良し家族の温もりも私の所には入ってこない。 □2 夢うつつの私の頭の中には小人達が何やら準備を始めている。草原に壇が持ち込まれ、それ…