『一瞬小説・超短編小説』なみのり 創作総合

140文字程度の一瞬小説をメインに、短い小説を作ります。 2019/08/17から、本格的に活動しています。

超短編小説 No9 『星屑と列車』

□1
私は流星群を見に来ていた。
星の輝く群青の空は、地上を淡く照らしている。まるで海の中ににいるみたいな気分だ。
私達の街は水没してしまったのだ。

□2
私がそんな妄想をしていると、誰かがあっと声を上げる。
流星群が始まったのだろう。私も空を見上げる。
空を切り裂くみたいに、幾つもの白いすじが通っていく。
炎の塊が、間隔を開けずに地上に降り注ぎ、水に落ちてシュボッと音を立てて消えていく。
そんな表現がピッタリだろうか。
私がそんなファンシーな考えに頭を支配されていると、流星群の一つが消える気配を見せずに、音も立てずに地上の街のある一箇所に吸い込まれていってしまった。

□3
一瞬の出来事だったし、私はなにか起きたのか理解できていなかった。
私は駅までいってみることにした。


駅に着くと、そこには人だかりができていた。
本当に流星が落ちたのだろうかと思ったが、そういうわけではないようだ。
ホームには蒸気機関が堂々と座っていて、黒い車体に赤い塗装がされている。
なぜ今更蒸気機関
「それはこの機関車が海の街を行くからデスネ。」
後ろから制服姿の人物に声を掛けられる。少しなまったみたいな声だ。
私は独り言を言っていただろうか…?
駅員さんは言葉を続ける。
「海をいくならダンゼン、炎をガンガン燃やせる蒸気機関車に限ります。ドウデス?お乗りになりませんか?」
海のなかで何故炎を?あべこべな話な気がする。
どうやらこれは夜行機関車で、今からこの機関車への乗り込みが開始されるようだ。


どうせ明日も明後日もお休みなのだ。
私はちょっとチケット代が高い、そして行き先も知らないその列車に乗ることにした。