超短編小説 No2 『風ネズミと夢図鑑』
□1
私は今、薄暗い屋根裏部屋でとある灰色のネズミを見つけてしまった。
このネズミは名前を「風ネズミ」と言う。
大きな風と一緒に飛んでいく不思議なネズミだ。
本の挿絵によるともっと綺麗な色とのことだったが、こういう変わり種もいるのだろう。
私はこの不思議なネズミを木の籠に捕まえる事に成功したので、色々実験してみようと思う。
□2
私はお気に入りの白衣(ちょこっと汚れている)をサッと羽織り、風ネズミの籠に向かう。
私はテレビで見た変な科学者よろしくクックックと声を挙げたのだが、このネズミはどこ吹く風で餌のリンゴをガジガジしている。第一実験の結果、このネズミは恐怖を感じる事が無いことが発覚した。
私はその後も風ネズミをツンツンつついてみたり、新しい餌をあげたりしてみたのだが、反応はとても薄い。
しまいに籠から引っ張り出して触っていたら突然、鼻の頭を齧られてその勢いで頭を蹴られて、窓から入ってきたそよ風に乗って何処かへ行ってしまった。
□3
私はお父さんの買ってきてくれた「夢図鑑」を広げて、「風ネズミ」の項目に色鉛筆でちょこちょこと書き足す。
それも済ますと私は頬杖をついて風ネズミの出ていった開けっ放しの窓を見る。
その間にも不思議な出来事は何処かへ流れていってしまう気がして、私は咄嗟に虫取り編みを持って外に出掛けた。
なにかが私を待っている。